市長メッセージ特別企画「デジタルで進める 一宮市の健康づくり」地域DX特別対談 一宮市長 中野正康×i-スマ会長 名古屋大学医学部附属病院 病院教授 白鳥義宗さん

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ページID 1067047  更新日 2025年6月25日 印刷 

デジタルで健康を意識する

kencomとマイナポータルを連携したときのイメージ画像:おくすり履歴や健診結果をkencom内で確認できる

中野 一宮市は昨年9月から、健康支援アプリ「kencom(ケンコム)」を導入しました。株式会社ディー・エヌ・エー(DeNA)のヘルスケア部門※1が開発したアプリで、他自治体で先行利用されていたものを一宮市の要望も踏まえて機能の追加などがされています。毎日の歩数や体重などを記録できるだけでなく、マイナポータルと連携することで健診結果も記録できます。さらに、マイナポータルでは最大5年分しか保存できない健診結果を、「kencom」では永続的に残しておくことができます。市民一人一人が生涯にわたって、自分の健康を意識するような文化を醸成できたら、と期待しています。

白鳥 そうですね。自分の体重や血圧をはじめ、健診結果を意識していない方が多いです。私は内科医として患者さんに「自分の状況を知ってください」と伝えています。まずは自分の健康状態に興味を持つことが重要なので、スマホで過去の健診結果をすぐに確認・比較できることは非常に素晴らしいと思います。

中野 私も人間ドックを毎年必ず受診していますが、どさっと分厚い冊子の健診結果をいただくんですよね。それをしっかり保存して毎年比較するのは、なかなか難しいです。これがデジタルで5年前や10年前の健診結果と簡単に比較できるというのは、健康意識の醸成に大きく役立つのでは、と期待しています。

 

※1 株式会社ディー・エヌ・エー(DeNA)のグループでヘルスケア事業を展開するDeSCヘルスケア株式会社が開発・運営

母子健康手帳も、デジタルで便利に

対談の様子の写真

中野 一宮市は、「kencom」と母子健康手帳アプリ「138おやこ手帳アプリ」を都市OS※2で連携させる取り組みを進めています。二つのアプリをつなげることで、子どもの時の予防接種の記録など、生涯の健康に関わるデータをアプリで確認できるようになります。大人になったときに役に立つ場面が多いと考えていますが、白鳥会長のお言葉もいただければと思います。

白鳥 日本には母子健康手帳に予防接種を記録して保存するという、世界的に見ても素晴らしい取り組みがありますよね。ただ、紙の手帳だとなくしてしまうこともあるので、デジタルで保存すれば大人になったときにも有効活用できると思います。例えば、海外へ留学するときなどに予防接種の記録を求められることがありますが、紙の手帳をわざわざ取り寄せることなく、アプリで確認できることは素晴らしいと思います。

中野 私も30年前に海外の大学院に留学する時、予防接種の証明書の提出を求められました。手元になかったので産業医に証明書を書いてもらったのを覚えています。

白鳥 そうですよね。予防接種の履歴はとても大事ですが、何十年も経過すると正確なことが分からなくなることもあるので、デジタルで記録を残しておけるというのは、とても意味があると思います。

 

※2 都市OS…自治体や企業が保有するさまざまな分野のデータを横断的に連携する基盤

健康意識の向上への取り組み

中野 健康づくりですが、一宮市としてどういった啓発をすればいいのか、アドバイスをいただければと思います。

白鳥 まず食事の面では、何でも好きな物を食べるのではなく「どういった食事をすべきか」をしっかり考えていただきたいです。今はカロリーや成分をアプリで簡単に調べることもできるので、そういった健康意識をもって食事を選んでもらうことがスタートかと思います。

中野 なるほど。長い人生で健康に楽しく生きていくためには、食事をはじめ運動・睡眠もちゃんと自分で考えて管理するべきですよね。一宮市としても、若い世代、例えば中学生ぐらいのときから学校で教えられる機会があるといいですよね。

白鳥 そうですね。患者さんを診ていても、若い世代は健康に対しての意識が薄いんです。学校で教えるということについては、私も同意見です。将来健康を気にする年齢になったときに、健康に関する知識を教わったことがあるかないかは大きな違いになります。学校で学んだ知識を、親や祖父母に伝えていくこともできますし、孫の言うことは受け入れられやすいですから(笑)。

中野 中学校の保健体育などの授業でしっかりと伝えさせていただきます。また、おっしゃるとおりで、高齢者向けのスマホ教室でも一番の人気企画はお孫さんとのテレビ電話なんですよね。世代を超えて、孫から祖父母世代に知識を逆流させるということにも取り組んでいきたいですね。

「見える化」による意識と数値の改善

対談する白鳥会長の写真

中野 もう一つ、簡単にできる健康づくりといえば「歩く」ことですよね。また、一宮市としてはエコの観点から、自動車ではなく公共交通機関の利用も呼びかけています。運動と公共交通というテーマについても白鳥会長からアドバイスをいただければと思います。

白鳥 おっしゃるとおりで、東京だと電車の乗り換えなどでたくさん歩きます。道路も渋滞しているので、公共交通機関が最も効率的な移動の方法となるかと思います。一方で、一宮市では自動車で移動することが最も効率的かもしれませんが、脱炭素の観点からは、この状況を見直す必要があります。公共交通機関の利用がもっと便利になる仕組み作りと、歩くことのメリットを周知することが重要になってきます。例えば、「kencom」では画面に歩数が表示されて、その日の目標の歩数を達成するとポイントがもらえます。加えて、毎日歩くことで健康診断の数値も良くなるなど、自分にとってのメリットが分かりやすくなっています。

中野 そうですよね。ちゃんと頑張った成果が目に見える形になるということが良いですよね。

体の記録をkencomに保存している画像

白鳥 私は内科でも肝臓の専門ですが、最近は脂肪肝の方が多いんです。脂肪肝を改善するためには体重を減らす必要があります。個人差はあるものの、少し食事に気をつけたり、少し歩く距離を増やしたりして、たった2~3キログラム減量するだけでも改善します。

中野 それだけで変わるんですか。

白鳥 ほんのちょっとですよね。たとえそれが1キログラムだけだったとしても数値の改善に結びつきます。自分のやったことが成果に結びついて、改善していることが見えると、「頑張ろう」という気になるんですよね。なので、「kencom」で自分の健康状態を「見える化」することで、若い世代にも自分の健康に関心を持ってもらい、病気にならなくなる、ということが重要だと思います。

中野 そうですよね。「kencom」もデジタル広告などを活用して、多くの世代に幅広く届くようにしていきたいと思います。若くて健康なうちから少し気をつけるだけで、年齢を重ねたときにも効果があるということですよね。

正しい情報を選ぶスキルや知識を磨く

kencomで健康情報を取得する画面
▲kencomでは健康に関する情報の発信も

中野 健康に限らず、インターネットには情報があふれ返っています。その中で、できるだけ正しいものを選択できるようにリテラシー教育が大事だと考えています。

白鳥 大切なことですよね。少し前までは、小さい子にスマホを持たせると危険だといわれていましたが、今は早いうちに使い方を教育する必要があるのでは、と変わってきています。自分で正しい情報を選んでいくスキルや知識がないと、大人になってからだまされる危険性もあります。正しい情報なのか、間違った情報なのかを若いうちから見極められるようになることが重要だと思います。また、行政が正しい情報をどんどん発信することで、誤った情報ばかりが出回ることがないように、情報を健全化していくことは、非常に意味があることだと思います

日本ならではの手厚いサポート

中野 日本人は健康で長生きというだけでなく、乳幼児の死亡率が低いですよね。アジアでは日本の母子保健制度を教えてほしいという要望が多く、母子健康手帳にも注目が集まっているそうです。日本は高齢化などの課題先進国だといわれており、それに打ち勝つために生み出してきたプロダクトやサービスなどは、世界に誇れるものだと思いますが、いかがでしょうか。

白鳥 日本は両親や、それを支える保健所が非常に頑張っていますよね。乳幼児の死亡率が低いのは、子のことを思う親や保健所、医療の成果で、世界に誇れるものだと思います。保健師さんや助産師さんも非常に丁寧で、出産前からいろいろなことを教えてもらえるんです。出産後も子どもが熱を出したときなど、海外と違ってきめ細かい対応をしてくれますしね。

中野 なるほど。母子健康手帳だけでなく、保健所や保健師さんなど、行政の手厚いサポートも重要なわけですね。

治療ではなく、健康にお金を使う

対談する中野市長の写真

白鳥 ただ、日本も今のままだと医療費が高くなり過ぎて、医療制度が維持できなくなります。改善するためにも、「kencom」のようなデジタルツールを活用し、治療のためでなく健康のためにお金を使ってもらえるようになるのがいいのではと思います。

中野 そうですよね。日本が世界に誇る皆保険制度や、保険証一つで医療機関を自由に選択できるといった良いところを、持続可能性のあるものにしていくために、市民一人一人の健康を、我々地方自治体が下支えできるよう頑張っていきます。

白鳥 ぜひ、よろしくお願いします。


 

「2025(令和7)年7月号 広報一宮」 掲載
※記事中の内容・数値などは掲載時点のものです。

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